0DTE(ゼロday to expiry=満期まで0日)オプションとは、満期まで1日を切ったオプションのことである。
オプションは満期までの残存日数が多ければ多いほど、時間的価値を多く持つために、オプション価格は高くなる。ヘッジ目的(保険)でオプションを利用することを考えると、オプション(=保険)が有効な期間が長いということは、それだけ経済的価値があるわけだから、保険料(オプション価格)も高くなることがわかるだろう。
残存日数が最も少ない(保険期間の最も短い)のが0DTEオプションだ。その日に満期を迎えるわけだから、支払う保険料もオプションの中で最も安くなる。本コラムでは、その安いオプションを使って短期トレードをする方法を考えてみたい。記憶に新しい2026年8月28日、FRBウォーシュ議長によるジャクソンホール講演下、S&P500(XSP)を0DTEオプションでトレードしてみよう。
すべてのオプションは最終取引日においては0DTEオプションとなる。個別株のオプションは金曜日に満期を迎えるので、金曜日にマーケットが開いたあとに、当日満期のオプションを取引すれば、それも0DTEオプショントレードということになる。
ただ、S&P500指数オプション(SPXオプション)、その10分の1のサイズのXSPオプション(=ミニSPXオプション)、そしてETFであるSPYオプション、ナスダック100指数オプション(NDX)、そのETF(QQQ)オプション、ダウ平均指数オプション(DJX)、Russell2000ETF(IWM)オプション、金ETF(GLD)オプション等は、直近2週間は毎日満期が設定されるため、毎日、0DTEオプションを使った短期トレード(デイトレ)が可能である。
また、最近では、個別株オプションにも月・水・金満期のオプションが設定されているものもある(マグニフィセントセブン他)。つまりテック銘柄で0DTEのトレードが週3日可能だということである。
【図表1】 満期の設定状況

出所:筆者調べ
ここで、0DTEのオプションが1ヶ月先の満期のオプションと比べてどれぐらいの違いがあるのかをみてみよう。
【図表2】米国東部時間2026年8月28日午前11時30分頃の0DTEのオプション価格表

出所:marketchameleon
これは、米国東部時間2026年8月28日午前11時30分頃の0DTEのオプション価格表である。このときの権利行使価格777のコール(C777)は中値0.72米ドル(以下「ドル」)、プット(P777)は中値0.96ドルだった。ちなみに、このとき、約1ヶ月先の9月25日満期のオプション価格表は以下の通り。
【図表3】米国東部時間2026年8月28日午前11時30分頃の9月25日満期のオプション価格表

出所:marketchameleon
C777の中値は10.48ドル、P777の中値は8.08ドルである。実に、0DTEの10倍以上の価格差があるというわけだ。
さあここからは相場を見ながら説明していこう。現地時間午前10時から始まった講演の前半は、AIによる生産性向上と経済成長についてポジティブな発言があったことから株価(XSP)は勢いよく上昇し、776ptを超えてきた。
【図表4】米国東部時間2026年8月28日午前11時30分頃のXSP5分足チャート

出所:Webull Desktop
ここから株価がさらに上がるのか、下落に転じるのかは誰にもわからない。そこで、このような場面でコールとプットを両方買ってみてはどうか。
しかしオプションをコールとプット両方買うわけだからそれなりに資金が必要だ。1ヶ月先の9月25日満期のオプションだと、合計で18.56ドル必要になる(1枚あたり100株相当なので100倍の1,856ドル=約30万円※1ドル160円で計算)のに対し、0DTEであれば合計1.68ドルで済む(168ドル=約2.7万円※1ドル160円で計算)。0DTEであれば、低資金・短期間で結果が出るのである。このような取引に魅力を感じる投資家は多く、実際に個人投資家も0DTEオプション戦略を手掛けている。
個別株あるいはETFの0DTEのオプションを手掛ける場合に気をつけなければならないのは、満期(当日の米国東部時間16:00=米国夏時間下では日本時間翌日午前5時、冬時間では午前6時)の時点の株価がちょうど権利行使価格ぴったりで終わらない限り、コールかプットのいずれかが必ずインザマネー(コール「株価>権利行使価格」の場合、プット「株価<権利行使価格」の場合)になるため、いずれかが必ず権利行使を行う状態になってしまう点である。
コールがインザマネーで着地した場合は株を買うことになるためオプション1枚あたり100株を購入する資金が必要になる。プットがインザマネーで着地した場合は、自身が保有する当該株式をオプション1枚あたり100株売却することになるし、株を保有していない場合には、証券会社から借りて100株を売却することになる(空売り)。ウィブル証券では、100株を購入する資金が不足している場合や当該オプションの原資産株を保有していない場合には、マーケットが閉まる約30分前からオプションの建玉が強制的に決済されることになっている。
そうすると、引けまでポジションを引っ張れないし、強制決済は成り行き注文になるため、思いもよらない価格で決済されてしまうリスクもある(流動性の高い銘柄ではマーケットメイカーの気配提示の幅も小さい=スプレッドコストが小さいため、過度にリスクを気にする必要はないが、それでも不利な価格での売却のリスクはある)。
そこで、指数オプションを使うのである。前掲の一覧(図表1)における指数オプションは、満期に株を売買するのではなく、株価と権利行使価格の差額を金銭で清算する(差金決済)。例えばXSPが780ptで着地した場合、C777を1枚買っていたならば、差額780‐777=3ドル、つまり300ドルを受け取れる。このときP777は無価値=0となる。XSPが770ptまで下落して着地したならば、P777を1枚買っていた投資家は777‐770=7ドル、つまり700ドルを受け取れる。このときC777は無価値=0となる。
このように差金決済であれば、株を買う代金や株を用意する必要はなく、特にオプションを買っている分には、別途資金は必要にはならない。支払った金額を超えて損失が拡大することもない。だから、満期通過させることができるわけだ。自動権利行使により、しかも差金決済されるため、当初の支払額相当の最大の損失額を許容できる場合には投資家は特に何もする必要がない(途中で反対売買することももちろん可能)。満期清算は株価の終値(1つの価格)で行われるため、買い気配と売り気配の差(=スプレッド)を気にする必要もない。さらには、損益の出方を引き算で計算できるので複雑なブラックショールズモデルで損益を考えなくて良い(常に満期損益図で損益を計算できる=直線の損益図で考えることができる=損益は引き算で計算できる)。
実際のトレードでは、夜中にポジションを取ったら、あとは、いわゆる「果報は寝て待て」よろしく、PC画面(スマホ画面)を閉じて、朝、目覚めたところで口座を確認すればよいのである。さて、このポジションがどのように利益になるのかを直観的に捉えてみよう。原資産が上がったら、コールの値段が増加し、プットの値段は低下する。オプション価格はマイナスにはならないので、原資産が大きく上昇した場合、プットの損失は購入価格を超えては生じないのに対し、コールの利益は限定されない。つまりコールの利益がそのプットの最大損失額を上回ればポジション全体として利益になる。
【図表5】オプションの満期損益図

出所:mf-Boost
原資産が大きく下落した場合も同じだ。原資産が大きく下げた場合、コールの価格は低下するものの、マイナスにはならないので購入時に払った金額を超えて損をすることはないのに対し、原資産の下落でプットの価格は限定なく上昇する(なお株価はマイナスにはならないので株価が0になったらそこでプットの価格上昇も止まる)。プット利益がコールの限定された損失額を上回れば全体として利益になる。
ただし、相場が膠着し、上にも下にも支払った価格以上の変動がなければ損失がでるし、もし購入したオプションの権利行使価格(本事例では777pt)ピタリで終わった場合、このポジションは最大の損失を被ることになる(支払った価格の損失=下の頂点部分)。
【図表6】権利行使価格777のロングストラドル(@1.68)満期損益図

出所:mf-Boost
再び相場に戻ろう。
このあとウォーシュ議長は、米国東部時間午前11時30分ごろから、9月のFOMCにおける追加利上げを示唆するとともに、フォーワードガイダンスについてもこれに否定的な見解を示す。9月の利上げ確率も上昇。これを受けて、S&P500は一気に上昇分を打ち消しマイナスに沈むことになった。
【図表7】米国東部時間2026年8月28日午前11時30分以降のXSP5分足チャート

出所:Webull Desktop
結果、着地は771pt。差金決済によりP777から6ドル(×100=600ドル)を受け取ることになる。C777は0だ。スタート時権利行使価格777のコール(C777)とプット(P777)を購入し1.68ドル(168ドル)支払っていたところ、満期の差金決済により、P777が6ドル(600ドル)を得ることになるため、純利益は600ドル‐168ドル=432ドル。わずか数時間、168ドルの投資で432ドルを得た。つまり本事例(2026年8月28日)の取引ではリスクに晒した資金に対するリターン(ROI)は257%にもなるのである。
0DTEオプション戦略の面白さは、このように、損益のメカニズムがシンプルなこと(BSモデル不要で引き算で損益が計算できること)、低資金でできること、当日に結果が出るということ、結果、数多く施行できるということだ。もし優位性がある(と思う)タイミングで入れるならば(期待値がプラスのタイミングが見つかれば)、1回1回の取引では負けることが多くても、数多く手掛けることで、その優位性(期待値プラスの結果)が立ち上がってくる可能性がある(大数の法則)。