定期的に配信しているコラムをお送りします。今回の内容はこちら⇓ 是非ご一読くださいませ。
来週の独立記念日を前に、米国では引き続き、上院での減税・歳出法案の審議や調整が続いていますが、上院議員の意向の強かったイラン・イスラエルの停戦に向けた動きなどで、役割を果たしたトランプ政権。
変動幅(VIX指数)は低下し、25日の株式市場ではナスダック100指数やエヌビディアが最高値を更新する展開となっています。
この1か月間を振り返ると、S&P500種株価指数構成企業の25年の予想EPS(1株当たり純利益)は小幅に上方修正され、また、パウエルFRB議長の議会証言などを踏まえ、市場が織り込む26年までの政策金利の利下げ回数が増えています。
そして、S&P500の予想PERは23倍を超える水準まで買われています。
セクター別では、株式市場の好調を支えているのは、情報技術とコミュニケーションサービスなどで、AIの浸透が社会課題(生産性向上や人件費抑制等)を解決する糸口になるという期待が高まっていることが反映されています。
特に、メガIT企業はキャッシュフローが潤沢で、攻めの投資が可能なことから、勝ち組がさらに勝ち組になる循環が生まれやすいです。
通信規格の進化や省電化も含め、新たなAIのサプライチェーンが構築される過渡期と言えます。
一方で、減税・歳出法案を見据え、国債増発やインフレ対応が引き続きリスクとして挙げられます。
これから夏場にかけては、相互関税が導入され、仕入れ価格が上昇した企業による、製品・サービスへのコスト転嫁・価格上昇が実施されることも想定されます。
また、中東情勢のリスクも消えたわけではありません。
そんな市況・テーマを受けて、株式市場では『長期ではポジティブ・短期ではやや慎重』という見方をする投資家が増えていることでしょう。
昨夜6月25日にはセミナーを実施して、市況解説やオプションを踏まえた投資戦略の解説をしましたが、Q&Aの時間に頂戴したご質問のなかで、株式市場が下落することに備える戦略に関するものが複数ありましたので、このコラムでも少し触れたいと思います。
株式市場の下落に備える戦略を取る場合、株式オプションにおいて、もっともシンプルな方法は、『プットオプションを買うこと』です。
特定の銘柄・権利行使価格・期日のプットオプションを買うことで、投資家は、期日までの間、設定した実際の株価が大きく下落して推移したとしても、権利行使価格で売却することが可能なため、下落からの損失を限定することが出来ます。
また、実際には、株価の下落時には、買ったプットオプションの価格が上がるので、決済(売却)して利益確定をはかるという対応が一般的です。
先物や信用取引(空売り)との違いは、主に以下の点です。
・先物は株式指数などに使われるが、個別銘柄には適用できない一方で、オプションであれば特定の個別銘柄に適用できる。(株式市場全体の動きと相関の小さい、例えば業績悪化などによる株価下落に備えられる)
・信用取引(空売り)は、取引単位が小さくできるメリットがあるが、株価が上がると損失を被る。一方でオプションの買いであれば、買った金額以上のリスクは負わず、損失(ヘッジコスト)を限定できる。そして、株価が上がったとしても決済して、当初コストの一部は回収できることが多い。
株価が下落したら買いたいという指値買いの感覚で、プットオプションを売り、下落を待っている期間にも現金収入を稼げるのが、いわゆるターゲット・バイイング戦略の特徴です。
このターゲット・バイイングを実践しながら、満期までの間のリスク、例えば、決算発表などを受けて、指値買いの価格よりも大きく株価下落した際の、(現物株をお目当ての値で買ったのは良いが)現物株の評価損が大きくなるリスクを防ぎたいという投資家のニーズは、一定程度存在します。
プットオプションを売りつつ、一定期間(決算発表跨ぎなどの間)、プットオプションを買ってヘッジすることで、『お目当ての銘柄を指値買い感覚で待つ』 そして、『意図した価格で購入するとはいえ、満期までの間の株価下落のリスク(=結果的に購入した途端、現物株で大きな評価損を抱えるリスク)を小さくする』ことが可能になります。
ここからは、6月9日のコラムで触れたナイキ(NKE)を使って、実際の市場価格・シミュレーションについて見ていきたいと思います。
価格は、6月24日の米国市場の引け値を使用します。(あくまでもシミュレーションの用途でのご紹介となり、投資推奨ではございません)
価格条件
・現物株価格:61.42ドル
・プットオプション➀価格(権利行使価格55ドル、満期日7月18日):0.79ドル
・プットオプション②価格(権利行使価格51ドル、満期日7月11日):0.25ドル
・決算発表予定日:6月26日引け後
取引例
・シンプルなターゲット・バイイング戦略として、プットオプション➀を売却し、1単位あたり79ドルを受領
・決算発表時に大きく株価下落するリスクを一部ヘッジするため、プットオプション②を購入し、1単位あたり25ドルを支払い
・トータルで54ドルを受領(取引手数料除く。以下同)
・必要資金は、5425ドル(ターゲット・バイイングの証拠金+オプション買い費用)
収益
A.決算発表を無事通過し、7月18日まで株価が55ドル以上で推移したケース:54ドル
⇒24日間、5425ドルを使って54ドルを獲得(=年利約15%)
⇒ヘッジ目的で購入していた51ドルのプットについて、不要になり決済(売却)した場合は、ヘッジ資金を一部回収可能(利回りが上昇)
B.決算発表を無事通過せず、7月18日まで株価が55ドル以下で推移したケース:7月18日に現物株を55ドルで購入することになるので、下落分については、現物株保有に関する評価損になる。
(カバード・コール戦略(コールの売り)等を活用しながら、株価の回復を待つのが一般的な戦略)
⇒但し、株価が大きく下落する際には、購入していたプットオプションの価格が上昇することが想定されるので、利食いの決済(売却)によって、株価下落分の評価損を一部回収可能。
具体的には、現物株を購入せず、当初売却していたプットオプションを決済(買戻す)したり、
さらに下値・先の限月でプットを売り直して、現物株の購入価格を下落させるなどの戦略も取れます。
(それぞれのケースに応じた利回りシミュレーションが必要となりますが、ここでは簡略化のために省略させて頂きます)
上記は、やや上級者向けの内容となるので、もし『まだオプション取引に慣れていないんだ』という場合は、決算発表の結果を待ってから取り組むなど、取引自体はシンプルにしつつ、銘柄を分散し、現金余力をしっかり確保したうえで投資されることをお勧めいたします。
投資家それぞれで異なる『ヘッジしたい内容』を極力、投資家の意図に沿って自在にリスク・リターンの形をデザインできるのが個別株オプション取引の魅力です。
米国株の取引機能は、市場改革も踏まえ、今後さらに利便性が高まることが予定されていますので、いち早くリテラシーを高め、ご自身にとって有用な戦略を実践すると良いのではないでしょうか?
なお、ウィブル証券でも取引機能の進化を継続しています。これまでのスマホにおける取引環境だけでなく、PC(パソコン)のアプリ上でもオプション取引が可能となったとのことです。リアルタイムで価格を見ながら取引できることで、複数のポジションを管理し投資する際に有用です。
来月は、FOMC後の7月31日(木)にセミナー を実施予定です。不明点・疑問点をその場でご確認頂けるので、ご活用下さい!
また、ニューヨーク証券取引所の方とのセミナーが7月2日(水) に予定されています。
ご興味おありの方はご参加を検討くださいませ。
良い投資を
志村暢彦
追伸
以下でも、たまに情報発信していきます。
NOTE
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